囲碁の起源(発祥の国)はどこ?日本が世界に広め歴史的な貢献も
囲碁は白と黒の石を交互に置いていくだけのシンプルなゲーム。でもその歴史をたどると、四千年という気の遠くなるような時間と、いくつもの国をまたぐ壮大な物語が見えてきます。
「囲碁ってどこの国で生まれたの?」——この素朴な疑問の答えは、実はそう単純ではありません。そして、その物語のなかで日本が果たした役割は、想像以上に大きなものでした。
今回は囲碁の起源から、日本が世界に与えた影響までを、やさしくたどっていきます。
囲碁の起源は「中国」が有力説
囲碁が生まれた国として最も有力とされているのが「中国」です。今からおよそ四千年前、中国で誕生したと言われています。
ただし、これは完全に確定した事実ではありません。囲碁の総本山である日本棋院自身も「はっきりしたことはわかっていない」と説明しており、中国ではなく「インド」や「チベット」で生まれたという異説も残っています。とはいえ、これらはあくまで少数派の見方です。今のところは「中国発祥説が主流」と考えておけばよいでしょう。
昔の囲碁は今とちがった?「初期配置」があった時代
意外に思われるかもしれませんが、大昔の囲碁は今のルールとは違っていました。
「現在の囲碁」は、何も置かれていないまっさらな盤面から対局が始まります。ところが「初期の囲碁」は、あらかじめ盤上の決まった場所に石が置かれた状態(初期配置)からスタートするのが一般的でした。つまり、対局者が自由に第一手を選べるわけではなかったのです。今の感覚からすると、少し窮屈なルールだったと言えるかもしれません。
1500年代の後半、日本で生まれた「自由に打ってよい」ルール
この囲碁の歴史を大きく動かしたのが、日本でした。
1550年ごろから1600年ごろにかけて(室町時代の終わりから安土桃山時代)、日本で「最初から自由に打ってよい」という新しいルールが生まれます。決められた初期配置をなくし、まっさらな盤面の好きな場所へ打てるようにしたのです。これによって囲碁の戦略の幅は一気に広がり、対局の奥深さは飛躍的に増しました。今わたしたちが親しんでいる囲碁の原型は、この日本での変化によって形づくられたと言ってよいでしょう。
「日本ルール」を中国・韓国も採用し世界標準に
日本で生まれた「最初から自由に打ってよいというルール」は、やがて囲碁発祥の地である中国にも逆輸入されていきます。
1900年前後、清朝の末期にあたる時代の中国にこのルールが伝わり、置き石をしてから始める昔ながらの方式から切りかわっていきました。韓国では1940年代の終わりから1950年代にかけて、日本で修行した趙南哲(チョウ・ナムチョル)が自由に打つ囲碁を広め、それまで打たれていた巡将碁(スンジャンバドゥク)に代わって定着していきます。こうして日本発のルールは国境を越えて広まり、今では囲碁の世界標準となっています。生まれた国だけでなく、まわりの国々までもが日本のルールを受け入れた——この事実は、日本の囲碁文化がいかに完成度の高いものだったかを物語っています。
英語でも囲碁は「Go」——日本語がそのまま世界へ
日本の貢献の大きさは、囲碁の「呼び名」にもはっきりと表れています。
英語圏では、囲碁のことを日本語由来の「Go(碁)」と呼びます。「囲碁を打つ」は英語で「play Go」。英語には同じつづりの動詞「go」があるため、区別しやすいように頭文字を大文字にして「Go」と書くのが一般的です。
ここで面白いのは、囲碁そのものを生んだのは中国なのに、英語名は日本語になっているという点です。これは、囲碁が世界へ広まっていくきっかけをつくったのが、日本の碁だったからです。納豆が「Natto」、将棋が「Shogi」と呼ばれるのと同じで、世界へ広めた国の言葉が、そのまま名前として定着したわけです。
中国が生みの親、日本が育ての親
ここまでの流れをひとことで表す、とても有名な言い回しがあります。それが「中国は囲碁の生みの親、日本は育ての親」という言葉です。
囲碁というゲームを生み出したのは中国。そして、そのルールを磨き上げ、世界じゅうに広めて育てたのが日本。両方の国があってこそ、今の囲碁があります。この言葉ほど、囲碁の歴史をうまく言い表したものはないかもしれません。
■あとがき
「囲碁ってどこの国のもの?」という問いから始まりましたが、たどってみると、中国で生まれ、日本で育ち、韓国をはじめ世界中へと広がっていった——そんな国境を越えたリレーのような歴史が見えてきました。
ふだん何気なく並べている白と黒の石には、四千年の時間と、たくさんの人たちの工夫が積み重なっています。そして、その物語のなかで日本が世界に果たした役割は、わたしたち日本人にとって少し誇らしいものでもあります。次に碁盤に向かうとき、この長い歴史のことをほんの少しだけ思い出してもらえたら嬉しいです。