将棋の世界は男女別?「棋士」と「女流棋士」のちがいを小中学生にもわかりやすく解説
将棋のニュースを見ていると、「女流棋士(じょりゅうきし)」という言葉をよく聞きます。
これを聞いて、「将棋って、スポーツみたいに男女で大会が別々なの?」「女性は、藤井聡太さんたちとは対局しないってこと?」と思う方、とても多いのではないでしょうか。
実は、将棋のルールやメインの大会に「男女別」という決まりはありません。男性でも女性でも、実力さえあれば「棋士(きし)」になることができます。
でも、それとは別に「女流棋士」という制度もあって……と、ちょっとややこしいですよね。この記事では、そんな将棋界の少し複雑な仕組みを、小中学生にもわかるようにやさしく解説していきます。女性たちが「初の女性棋士」を目指して戦う熱い物語も、あわせて紹介します!
1. プロ「棋士」に、男女のちがいはない
まず、いちばん大事なポイントからお話しします。
藤井聡太さんや羽生善治さんのような、プロ将棋界のトップで戦う人たちを、正式には「棋士(きし)」と呼びます。
そして、この「棋士」になるための制度に、性別の制限はまったくありません。男性でも女性でも、実力さえあれば「棋士」になれるのです。
棋士になるのは「想像を絶するほど」きびしい
では、どうやって棋士になるのでしょうか。ほとんどの棋士は、「奨励会(しょうれいかい)」という、プロを目指す人たちが集まる養成機関で勉強しています。
奨励会では、全国から集まった天才たちが、日々対局を重ねて昇級・昇段していきます。そして、三段リーグという最後の関門で、年に4人だけが「四段=プロ棋士」になれるのです。
しかも、年齢制限があります。一定の年齢までに規定の成績を残せなければ、退会(たいかい)しなければなりません。プロになる道は、本当に本当にきびしいのです。
まだ女性の「棋士」はいない
この奨励会には、これまでに何人もの女性が挑戦してきました。でも、現在に至るまで、奨励会を突破してプロ棋士になった女性は一人もいません。
だからテレビで見る大きなタイトル戦(竜王戦や名人戦など)には、男性棋士ばかりが出場しているのです。男女別のルールがあるわけではなく、結果として男性だけになっているということです。
2. 「女流棋士」ってどんな制度?
では、「女流棋士」とは何なのでしょうか。
女流棋士とは、女性だけが対象のプロ制度で活動する人たちのことです。1974年に作られた、棋士とは別の制度です。
棋士と女流棋士のちがい
この2つ、似ているようで、実はまったく別の制度です。表にまとめるとこんな感じです。
| 項目 | 棋士 | 女流棋士 |
|---|---|---|
| 性別 | 男女不問(実際は男性のみ) | 女性のみ |
| なり方 | 奨励会を突破、または棋士編入試験に合格 | 女流棋士独自の試験に合格 |
| 出場する大会 | 竜王戦、名人戦など(七大タイトル) | 女流名人戦、白玲戦などの女流棋戦 |
つまり将棋界には、「2つのプロ制度」が並行して存在しているということです。これが「男女別なの?」と勘違いされやすい原因なんですね。
なぜ女流棋士制度が作られたの?
奨励会を突破するのは本当に大変です。でも、「将棋を職業にしたい」「将棋を広めたい」という女性はたくさんいました。
そこで、「将棋を指す女性を増やしたい」「女性が将棋で活躍できる場所を作りたい」という思いから、1974年に女流棋士制度が生まれたのです。
女流棋戦にはどんな大会があるの?
現在の女流棋戦(女流棋士が出られる大会)には、こんなものがあります。
- 白玲(はくれい)戦
- 女流名人戦
- 女流王座戦
- 女流王将戦
- 女流王位戦
- 清麗(せいれい)戦
- マイナビ女子オープン
- 倉敷藤花(くらしきとうか)戦
これらの大会で優勝した女流棋士は、「女流名人」や「白玲」といった称号(しょうごう)をもらえます。
3. 女流棋士も、男性棋士と戦える!
「じゃあ、女性は男性とまったく対局しないの?」そう思った方、ご安心ください。女流棋士は、男性棋士と戦う機会もちゃんとあるのです。
公式戦への「出場枠」がある
女流棋士の中で、トップクラスの成績を残した人たちには、男性棋士たちが戦う公式戦への出場枠が与えられます。
例えば、竜王戦、王座戦、棋王戦、朝日杯将棋オープン戦など。ここでは、女流棋士と男性棋士が同じ土俵で真剣勝負をくり広げます。女流棋士が男性プロ棋士を破る熱い対局も、何度も生まれています。
4. 「初の女性棋士」への挑戦
「奨励会を突破する以外に、女性が棋士になる方法はないの?」
実はもう一つ、「棋士編入試験(きしへんにゅうしけん)」という道があります。
棋士編入試験ってなに?
これは、アマチュアや女流棋士でも、プロの公式戦で「10勝以上・勝率6割5分以上」という素晴らしい成績を残せば、プロ棋士になるための試験を受けられる、という制度です。
試験の内容は、若手棋士5人と5番勝負を戦い、3勝すれば合格というもの。合格すれば、女性でも「棋士」になれるのです。
この編入試験に、これまで2人の女性が挑んできました。
福間香奈(ふくま かな)さんの挑戦
2022年、福間香奈さん(旧姓・里見)が、女性として初めて棋士編入試験に挑戦しました。しかし結果は3連敗で不合格。夢はかないませんでした。
西山朋佳(にしやま ともか)さんの挑戦
2024年から2025年にかけて、西山朋佳さんが、女性2人目の挑戦者となりました。西山さんは第1局と第4局に勝利し、「あと1勝で合格」というところまで迫りました。将棋ファンだけでなく、全国が大きく注目した歴史的な挑戦でした。
しかし、最終第5局で敗れ、2勝3敗で不合格。初の女性棋士誕生は、またしてもあと一歩及びませんでした。
福間香奈さん、2度目の挑戦へ
そして2026年、福間香奈さんが2度目の編入試験に挑戦しました。しかし第1局から第3局まで3連敗となり、またしても不合格という結果に終わりました。
まだ女性の「棋士」は誕生していません。でも、女性たちの挑戦はこれからも続きます。
もう一つの新しい道「クイーン白玲」
実は最近、もう一つ新しい道が作られました。
女流棋戦で最も格式が高い「白玲戦」で、白玲のタイトルを5回獲得すると、「クイーン白玲」という称号がもらえます。そしてクイーン白玲になれば、男性棋士と同じ舞台(フリークラス)に入る資格が得られるのです。
現在、白玲のタイトルを持つ西山朋佳さんは、通算4期を獲得済み。次に防衛すれば、クイーン白玲の資格を手にすることになります。
初の女性棋士誕生への期待は、ますます高まっているのです!
5. 将棋界のしくみをまとめると…
少し複雑な話が続いたので、シンプルにまとめます。
将棋界には、「棋士」と「女流棋士」という2つのプロ制度がある。
- 棋士……男女不問。ただし現在は、全員が男性。
- 女流棋士……女性のみ。女流棋戦で活躍する。
女流棋士の中でも活躍した人は、男性棋士の大会に出場できる。そして最近は、「棋士編入試験」や「クイーン白玲」といった、女性が棋士になるための道も用意されている。
つまり、「男女別に戦っている」わけではなく、「2つの制度が並びつつ、女性が棋士になる道も開かれている」のが将棋界なのです。
あとがき
ここまで読んでくれてありがとうございました!
将棋界の仕組みは少し複雑ですが、こうして見てみると、「女性が将棋で活躍できるように」という思いがずっと続いてきたことがわかります。
1974年に女流棋士制度ができ、2000年代には編入試験制度が整い、そして最近はクイーン白玲という新しい道まで用意されました。一歩ずつ、でも確実に、女性の将棋の世界は広がってきているのです。
福間香奈さん、西山朋佳さんをはじめ、多くの女流棋士たちが、日々男性棋士たちと真剣勝負をくり広げています。その中から、きっといつか、「初の女性棋士」が誕生する日がやってくるでしょう。
その歴史的瞬間を、リアルタイムで見届けられるかもしれない——今は、そんなワクワクする時代です。
将棋は、盤と駒さえあれば誰でもどこでも楽しめるゲーム。インターネット中継やYouTubeで、プロの対局を見ることもできます。男性・女性という枠を超えて、真剣勝負がくり広げられる将棋の世界を、ぜひのぞいてみてください!