藤井聡太が国民栄誉賞をもらう条件とは?「二度目の八冠」か「永世八冠」か、残された2つの道
みなさんは「藤井聡太(ふじいそうた)」という将棋(しょうぎ)のプロ棋士(きし)を知っていますか?
中学生のころにプロデビューして、それから次々と大人の強い棋士たちに勝ち続け、今では「天才」「生きる伝説(でんせつ)」と呼ばれている人です。将棋を知らない人でも、テレビやニュースで名前を見たことがあるかもしれませんね。
そんな藤井さんについて、ファンのあいだでよく話題(わだい)になることがあります。それが、
藤井聡太さんは、いつ
「国民栄誉賞(こくみんえいよしょう)」を
もらえるの?
という話です。
国民栄誉賞というのは、日本中の人に勇気(ゆうき)と感動を与えた人にだけもらえる、とってもすごい賞(しょう)です。これまで将棋や囲碁(いご)の世界では、羽生善治(はぶよしはる)さんと井山裕太(いやまゆうた)さんの2人だけがもらっています。
実は、ただ「強い」だけではこの賞はもらえません。「誰もが『もう無理だ』と思うような大きなカベを、必死にのりこえた」という物語(ものがたり)が、とっても大切なんです。
今、藤井さんの前には大きな2つの道が用意されています。この記事では、小学生や中学生のみなさんにもわかるように、その道のりがどんなにきびしいものなのかを、やさしく説明していきますね。
まずは前知識:「8つのタイトル」ってなに?
将棋の世界には、「8大タイトル」と呼ばれる8つのえらい称号(しょうごう)があります。イメージとしては、「一番強い人だけがもらえる8つのチャンピオンベルト」みたいなものです。
8つのタイトルは、
- 竜王(りゅうおう) … 一番賞金(しょうきん)が高い、とても大事なタイトル
- 名人(めいじん) … 一番れきしが古い、伝統(でんとう)あるタイトル
- 王位(おうい)
- 叡王(えいおう)
- 王座(おうざ)
- 棋王(きおう)
- 王将(おうしょう)
- 棋聖(きせい)
の8つです。
この8つを全部持っている状態を「八冠(はちかん)」と言います。将棋の世界では、八冠になることは「頂点(ちょうてん)に立った」ということで、ずっと夢の記録だったんですよ。
道その①:「もう一度、八冠をとりもどす」道
まずは1つ目のきびしい道から見ていきましょう。
きっかけは、囲碁の井山さんのストーリー
昔、囲碁の世界で井山裕太さんが国民栄誉賞をもらいました。そのとき一番評価(ひょうか)されたのは、「一度は全部のタイトルを取ったあと、くやしくも全部失ってしまい、それでもあきらめずに、もう一度全部を取りもどした」という、すごい「カムバック」のストーリーでした。
実は、藤井さんにも今、同じような試練(しれん)が来ているんです。
2020年7月伝説のはじまり(17歳11カ月)
2020年7月16日、藤井さんは「棋聖戦」というタイトル戦で勝って、人生はじめてのタイトル「棋聖」を手に入れました。このとき、なんと17歳11カ月。これは「最年少(さいねんしょう)」の新記録でした。
ここから、藤井さんのすごい快進撃(かいしんげき)がはじまります。
2023年10月ついに「八冠独占」を達成(21歳2カ月)
それから3年ちょっと。タイトルを次から次へと奪(うば)いとっていった藤井さんは、2023年10月11日、王座戦で勝利して、ついに将棋の歴史上はじめて「8つのタイトル全部を一人でひとりじめする(八冠独占)」という、とてつもない偉業(いぎょう)を成しとげました。
このとき藤井さんはまだ21歳2カ月。日本中が大さわぎになりました。
2024年6月はじめての失冠、七冠へ(21歳11カ月)
でも、頂点に立った人には、さらにきびしい運命が待っていました。
2024年6月20日、「叡王戦」の第5局で、同じ学年のライバル伊藤匠(いとうたくみ)七段に負けてしまいました。これは藤井さんにとって、23回目のタイトル戦ではじめての負け。叡王のタイトルを失って、「七冠」にもどってしまいました。
2025年10月八冠がくずれ、「六冠」へ(23歳3カ月)
そして、さらに大きな事件(じけん)が起こります。
2025年10月28日、今度は「王座戦」の第5局で、またしてもライバル伊藤匠さんに敗(やぶ)れ、王座のタイトルまで失ってしまいました。
これで藤井さんのタイトルは、ついに「六冠」にまで減ってしまったのです。8つのタイトルをずっと守り続けるのがどんなに人間わざを超えていたか、みんなが思い知らされた瞬間(しゅんかん)でした。
現在(2026年)~これから:じごくの「奪還(だっかん)ロード」
もう一度「八冠」になるためには、失った「叡王」と「王座」の2つを、もう一度取りもどさなければいけません。
ところが、これがめちゃくちゃ大変なんです。
▼ なぜそんなに大変なの?
特に王座戦は、「一次予選 → 二次予選 → 本戦トーナメント → タイトル戦」という長い道のりがあって、しかも本戦トーナメントは「1回でも負けたら終わり」という一発勝負。
他の棋士たちはみんな、「打倒(だとう)・藤井」と燃えています。たった1回のミスも許されない中で、トーナメントを勝ち上がり、さらにタイトル戦でも勝たなければいけない。これはまさに、「針(はり)の穴を通すような」難しさなんです。
道その②:気の遠くなる「永世八冠」への道
もう1つの道は、「永世称号(えいせいしょうごう)」をぜんぶそろえるという道です。
「永世称号」ってなに?
タイトルを長いあいだ守り続けると、「永世◯◯」という特別な名前がもらえます。たとえば「永世棋聖」や「永世名人」など。これは、「一生そのタイトルにふさわしい人」とみとめられた証(あかし)なんです。
永世称号をもらうには、「5年連続で勝ち続ける」とか「通算(つうさん)10回タイトルを取る」など、タイトルごとにちがうルールがあって、どれもすごくきびしい条件なんです。
羽生善治さんは、この永世称号を7つそろえた「永世七冠(えいせいななかん)」を達成して、それがまさに国民栄誉賞の決め手になりました。ただし、これを達成するまでに28年もかかっています。
藤井さんがめざすのは、さらにその上の「永世八冠」。8つ全部をそろえるという、とんでもない記録です。
2024年7月はじめての永世称号「永世棋聖」(21歳11カ月)
2024年7月1日、藤井さんは棋聖戦で5連覇(れんぱ)をはたし、「永世棋聖」の資格を手に入れました。21歳11カ月での獲得(かくとく)は、なんと史上最年少。この記録は、あの中原誠(なかはらまこと)さんが持っていた「23歳11カ月」という記録を、53年ぶりに塗りかえるものでした。
2024年8月2つ目の永世「永世王位」(22歳1カ月)
そのたった2カ月後、2024年8月28日には王位戦で5連覇して、「永世王位」の資格もゲット。22歳1カ月という若さで、早くも2つの永世称号を手にしました。
2025年11月最高峰の「永世竜王」(23歳3カ月)
さらに、2025年11月13日。将棋界で一番えらいタイトルといわれる「竜王」も5連覇して、「永世竜王」の資格まで獲得!23歳3カ月で、早くも3つの永世称号がそろいました。これもまた史上最年少記録です。
現在(2026年)~これから:残り5つのけわしい道
でも、残り5つの永世称号への道は、決して平(たい)らではありません。むしろ、後半になればなるほど、「年齢(ねんれい)」や「長い期間モチベーションを保つこと」という、目に見えない敵と戦わなければならないんです。
今の状況を、ざっくり整理してみましょう。
- 永世棋王:あと1期で達成!射程圏内(しゃていけんない)
- 永世名人:あと2期で達成!これも近い
- 永世叡王:タイトルを失っているので、まずは伊藤匠さんから叡王を奪い返すところから。その後もあと2期必要
- 永世王将:「通算10期」というルールで、まだまだ長い道のり
- 名誉王座(めいよおうざ):これが一番きびしい!失った王座をもう一度取り返したうえで、さらに5年連続、または通算10期守り続けるという、とんでもない試練
特に最後の「名誉王座」は、前に説明した「針の穴を通すような」奪還トーナメントを勝ち抜いたあと、さらに長い年月をかけて守り続けないといけません。まさに、もっとも高く、もっともけわしい壁なのです。
まとめ:歴史はふたたび、「過程」に注目する
ここまで見てきたように、藤井さんの前には2つの大きな道があります。
- 「もう一度の八冠」をめざす、短期決戦(たんきけっせん)の逆転劇(ぎゃくてんげき)
- 「永世八冠」をめざす、気の遠くなるような長い長い証明(しょうめい)の旅
どっちの道を選んでも、藤井さんがこれから挑(いど)まなければいけないのは、
- 全棋士からの「打倒・藤井」包囲網(ほういもう)
- たった1回の負けも許されない一発勝負のプレッシャー
- 「自分自身の記録に勝ち続ける」という、目に見えない重圧(じゅうあつ)
この3つです。
昔、羽生さんや井山さんがそうだったように、国民栄誉賞の本当のすごさは、「みんなが『もう無理だ』と思った絶望(ぜつぼう)から、はい上がっていく姿」にあります。
藤井さんがこの分厚(ぶあつ)いカベにどう立ち向かって、どんなドラマを見せてくれるのか。
今わたしたちは、将棋の世界に新しい神話(しんわ)が生まれる「もっともきびしい過程」を、リアルタイムで目撃しているのです。
あとがき
最後まで読んでくれて、ありがとうございました!
藤井さんの物語(ものがたり)を読んでいると、「強い人でもかんたんには勝ち続けられない」ということがよくわかりますね。一度頂点に立ったあとに負けてしまう、あのくやしさ。そこからまた立ち上がって挑戦する勇気。それこそが、たぶん一番かっこいいところなんです。
将棋を知らない人でも、「全力でがんばっている人を応援(おうえん)する」のはきっと楽しいこと。テレビでタイトル戦が放送されるときには、ぜひお父さんやお母さんといっしょに、藤井さんの戦いを見てみてくださいね。
将棋のルールがむずかしくても大丈夫。「今、どっちが勝ちそうなのか」は、テレビやネット中継で「AIの評価値(ひょうかち)」として数字で出てくることも多いので、初心者(しょしんしゃ)でもけっこう楽しめますよ。
もしかしたら数年後、みなさんが大人になるころには、藤井さんが国民栄誉賞をもらっているかもしれません。そのとき「あ、あのとき読んだ記事の話だ!」と思い出してもらえたら、うれしいです。
それでは、また別の記事でお会いしましょう!