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異世界転生神話 モコモコ道 ~いずれ魔王になる神は、最愛の女性を幸せにできない~ 作者:ムスイ
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第09話(一)モコモコの魔法

そこは森の近くにある大きな岩がある場所だ。
岩の隅の方に、バケツと、ほかに細々したものがいくつか用意されてあった。
モコモコはバケツを持ち上げて私に手渡す。

「今から火を使うから、川から水を汲んできて」
「ん? ああ、わかった」

バケツを受け取り、すぐそばの川から水を汲んでくる。
モコモコは何か準備をしていた。何だろう?

「バケツはこの岩のそばにおいて」

そう言って、モコモコはポケットの中から何かを取り出した。
「枯れ葉」だ。
その枯れ葉を大きな岩の上に置いた。

「風で飛ばないように………」

そう言って、枯れ葉の上に小さな石を置く。

「よし、準備できた!」

いったい何を始めるつもりなのだろうか?

「それじゃあ、見ててね!」
「ああ、わかった」

なんか、いつもと違って気合入っているな~………、
一体何が始まるのだろうか。

「よ~し………、行くね~………、ハアアアアア~………、フンッ!!」

そういうと、モコモコは両手を万歳のように上げ、手を月にかざした。

「フゥゥゥゥン…………」

なんか、うなっている。
これは………、何をしているのだろうか?
月に手をかざして………、それで何をやろうとしているのだろうか?
私はしばらく様子を見ることにした。

「…………」(←私)
「…………」(←モコモコ)
「…………」(←私)
「…………」(←モコモコ)
「…………」(←私)
「…………」(←モコモコ)







………え? 何?
一体、何をやってんの?
見ててね、とか言ってたから見てるんだけど………。
モコモコが月に手をかざしているだけで、何も始まらない。

え? これをずっと見てなきゃいけないの?
何をやっているのかもわからないのに?

「…………」(←私)
「…………」(←モコモコ)
「…………」(←私)
「…………」(←モコモコ)

う、う~む………、さすがに聞かねばなるまいて………。

「モ、モコモコさん………、あの………、
 いったい、何をやっているのでしょうか?」

私はモコモコの邪魔にならないよう、極力気を使って質問してみた。

「今ね………、月の力を………、集めているところなんだよ………。
 だからね………、もう少し、待ってね………」

やはり、一生懸命頑張っているところを邪魔してしまったようだ。

「わ、わかった。よくわからんが、頑張ってね」
「うん………」

ほんとよくわからんが、私は見守ることにした。







(30分経過)

「よし、できた!!」
「おお」

やっと終わったか。
長い、長かったぞ。ここまで待たせたんだ。いったい何を見せてくれるのやら。

モコモコは岩の隅にある「木の棒」を拾い上げる。

「これはね、ワンドって言うんだよ。魔法を使うための道具」
「魔法を使うための道具………って、ま、まさか、モコモコ………」

モコモコはニンマリと笑った。

「うん! 今から私、魔法を使うんだよ!」

そうか、モコモコはいままで魔法を使うための準備をしていたのか。
ということは、あの月の光の中に何らかのエネルギーがあって、それをモコモコが手で吸収していたってことだろうか?
よくわからんが、そうとしか考えられない。

モコモコは岩の上に置いた枯れ葉に向き合う。

「それじゃあ、今から魔法を使うね!!」

いつになく気合が入っているモコモコの声が、さらにワンランク上がる。

モコモコは右腕を顔の前面で横にし、左腕をその下で横にする謎のポージングを行った。そして、そのままゆっくりと時計回りに回転させ、両腕が横いっぱいに広がったところで、何かをかき集めるかのように、体の前に球体を抑え込むようにつくる。

「フヌヌヌヌ……」

おそらく、魔力を終結させているイメージなのだろう。知らんけど。
だいたい、この不思議な踊り、絶対適当だろう。絶対意味がないだろう。
一体、誰が教えたんだろうか?

………十中八九、田吾作さんだろうな。
「イエ~イ!」と親指を立ててウィンクする田吾作さんが脳裏に浮かぶ。

モコモコの不思議な踊りはさらに加速度を増す。
両手で天から何かが降ってきたかのようなジェスチャー。
両手で地面から何かが生えてきたかのようなジェスチャ―。
そして、お尻をブンブンブンブン降ったかと思うと
右腕で羽をはばたかせ、左腕で羽を羽ばたかせ
両腕でバッサバッサと空高く舞い上がると
そこで、モコモコはビシッ!と謎のきめポーズ。

一体、どれだけ練習すれば、そこまで華麗に踊れるようになるのだろうか。

「た、田吾作さん………、
 年端も行かない幼女にいったい何を教えてんですか………」

私は思わずそうつぶやいてしまった。

踊りはクライマックスに突入する

モコモコは右手でもつワンドに魔力(妄想)を流し込むと、右手をお前に押し出し、左腕を後ろに引いた。最後の謎のポージングをビシッと決める。

「ファイヤー!!(クワッ!)」

今までに見たことが無いほどの気迫をこめて、
モコモコは岩の上にある枯れ葉に向かって呪文を唱えた。

一体何が起きるのだろうか!?
私も気合を入れて、枯れ葉に注目した。

……しかし、何も起こらない。
………何も起こらないぞ。
…………な、何も…………。

「…………」(←私)
「…………」(←モコモコ)

モコモコは気合の入ったポージングのまま固まっている。
…………い、いや、顔を赤らめ、プルプルと震え始めた。
…………見るに堪えないとはこのことか。
…………空気が重い…………。
…………た、頼む。何か……起こってくれ………。
マジで、マジで頼みます…………

私は心から神に祈った。

すると………、先ほどまでは何もなかった枯れ葉に変化が起こり始める。

うっすらと煙が上がり始めたような……、
おお、煙だ! 間違いなく煙が上がり始めたぞ!
枯れ葉に円を描くように黒く焦げ始めているぞ!
そ、そして………、ポッ!と火がついた!
とうとう、とうとう、枯れ葉が燃え始めたのだ。

「や、やった~! やったよ、ムスイ!!」

モコモコ、大喚起である。

「ああ、やった! やったな、モコモコ!(滝涙)」

私は涙を流して喜んだ。一時はどうなることかと。

小さい枯れ葉はすぐに燃え尽きてしまった。
それでも、モコモコは初めて魔法を使えとても嬉しそうだ。

「この魔法ね、竹さんに教えてもらったの!」
「ん? 竹さん?」

誰だっただろう? 聞いたことはあるような………。

「竹さんはね、栄次郎さんの奥さんで、病気でいつも家の中にいるの」

私が「誰?」という顔をしたので、モコモコが解説してくれた。

「ああ、そういえばそうだったね」
「うん、竹さんはね、いろいろ知ってて、優しくて、とっても温かいんだよ!
 まるでお母さんみたいなんだよ!」
「ふ~ん、そうなのか~………」

そういえば、私は竹さんにあったことなかったな~。
そんなことを考える私を見て、モコモコは慌てふためく。

「あ、でも私のお母さんはムスイのお母さんだから、竹さんが私のお母さんってわけじゃないんだよ! いや、竹さんもお母さんだけど、違うんだよ! 本当だよ!」

何が違うのか、本当なのか、よくわからん。
話を変えよう。

「ま~、とにかく、月の光が魔力を持つってことでいいのかい?」
「え? ああ、うん。そうだよ」

話が変わり、モコモコは冷静になる。

「さっきみたいに月に手をかざすと、魔法を使えない人も魔法を使えるんだって。
 でもたくさんの魔力があるわけじゃないからどうしても時間がかかっちゃうの」
「なるほど………、30分くらいかかってたね」
「うん。本当は1時間くらいかかるんだけど………
 ムスイをあんまり待たせちゃ悪いから、魔力増幅の踊りを使ったの」
「魔力増幅の踊り?」

あの踊りのことか。

「うん、田吾作さんが教えてくれたの。
 あの踊りを使うと、あの踊りを使うと魔力が増幅するんだって」

田吾作さん………、絶対嘘だろう。

「こ、今度は1時間しっかり魔力を貯めこんでからやってみようね」
「うん、そうだね」

何にしても、魔法が成功してよかった。
きっと田吾作さんは「30分でも枯れ葉くらいなら燃える」と踏んだのだろう。
まったく………、適当なのか、計算高いのか。

「ねえ、ムスイ、知ってる?」
「ん? 何を?」

モコモコは急に深刻な顔にり、悲しそうな表情だ。

「魔法ってね、心のきれいな人が使えるものなんだって」
「誰がそんなことを? 竹さん?」
「ううん、おばあちゃんが昔、本で読んだんだって。
 だから、いっぱいいっぱいお祈りしないといけないよって」
「そうか………」

宗教の話しかな?
私にはわからない世界だ。

「だから、私、いっぱいいっぱいお祈りして、
 たくさんたくさん良い子でいるように頑張ったの。
 だけど………」

モコモコは泣きそうな表情だ。
なるほど、そういう事情だったのか。
モコ婆さんも変なことを教えてしまったものだな~。

仕方が無いので、私は慰めることにした。

「その話は事実じゃないから信じなくていいよ」
「え? どうしてそう思うの」

モコモコは私の方を見る。
そして、目を丸くして聞いてくる。

「だって、モコモコは良い子だからね。
 モコモコが魔法を使えないなら、その話は間違ってるってことだよ」

それを聞いて、モコモコは少し顔を赤らめ正面を向く。
照れ隠しなのか、人差し指と人差し指をツンツンし始めた。

「そ、そう思う?」
「うん、間違いない」

そう言うと、モコモコはガシッと私にしがみついてきた。
そして、スリスリしてきた。必死だ。

そんなモコモコを見て、私は「ああ、なつかれているな~」と思った。
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