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第07話幼馴染のモコモコ
村の人たちの為に頑張っている父さんを見習って、私は村中の畑を耕すことにした。この村は若い人がいないせいか、畑が少しあれている。畑から草が生えているし、水やりもしっかりとできているようには見えない。
畑はそれなりに広いのに、あまり栽培もしていない。自分たちで食べる分だけできればいいと判断しているってことだろうか? でも、たくさん作れば街に売りに行けるだろうし。
なんにしても、私のできる範囲でいろいろとやってみようと思う。
まずは自宅の畑の草を取って、耕した。野菜の種を植えて、水をやった。ま~、こんなものだろう。どれくらいで芽が出るんだろうか?
そして次に、別の家の畑を耕した。そうこうしていると、一人の女の子が私の元にやってきた。その子はテクテクとぎこちなく歩いてすぐ近くにやってきて
、木の下に座り、ジ~ッと私を見ている。
確か、この家に私と同い年の5歳の女の子がいたな。名前は・・・・・何だったかな? 忘れた。ま~いいや。
そんなことを考えながら畑を耕していると、女の子の方から私に話しかけてきた。
「ね~、ムスイ、何をやってるの?」
思いがけず話しかけられ、ちょっと焦る私。あの子は私の名前を知っていたのか。私は忘れてしまったというのに。なんだか申し訳ない。
「ええっとね……、畑仕事だよ」
「そこはウチの畑だよ?」
「ま~そうなんだけどね。荒れていたし、野菜を植えるスペースもあったから耕しておこうと思ったんだよ」
「ふ~ん・・・・・」
なんかよくわからんが、ジッと見ている。他に何か言いたげだ。
「野菜の種を植えてるんだよね? 野菜ができたらどうするの?」
「ん? そりゃ~、ここはキミんちの畑だから、キミ達が収穫して食べればいいんじゃないかな?」
「どうして? ムスイが植えたんだよ?」
「ま~そうだけど、こういうのは土地の持ち主のものになるものなんだよ」
それを聞いて、女の子は首を傾げた。
「ムスイが働いて野菜を植えているのに? ムスイのじゃないの?」
こだわるな~……。そんなん、どうでもいいともうのだが……。
私はこの娘が納得してくれそうな言い訳を考えた。
「ええっとね、なんと言えばいいかな~……。
その~、この世界には神様が決めたルールってものがあるんだよ」
「……神様が決めた、ルール?」
「そう。そのルールでは、野菜は土地の人のものになることになっているんだよ。だから、この野菜は私のものじゃなくて、土地の持ち主であるキミの家のものになるってことなんだよ」
その子は私をジッと見つめている。なんか息苦しい。
「……それじゃあ、どうしてムスイはウチの畑を耕しているの?
私の家のものになるのに、どうしてムスイが畑を耕しているの?」
「う~ん……、それはね、私がみんなの役に立ちたいと思ったからだよ。
こうやって畑を耕せば、たくさん野菜が取れる。
そうすればキミの家の生活が楽になろうだろう?
君の家だけじゃなくて、私は村のみんなのために働きたいと思ってね~」
「・・・・・」
返事がない。その女の子は私をジッと見つめたまま黙り込んでしまった。
結局、私がそこの畑仕事を終えるまで、その子はずっと私を見ていた。
「よし、これでここは終わりだ」
私は一息つき、チラリと女の子の方を見る。
女の子はずっと私の方を見ている。
う~ん・・・・・どう対応すればいいものやら。
「……ええっと、今度は田吾作さんとこの畑を耕そうと思うんだけど、……君も来るかい?」
「う、うん!」
そう返事をすると、その女の子は立ち上がり、トテトテと不器用な歩き方で私の方に歩いてきて、ガシッとしがみついてきた。
「ん?」
その女の子はしばらくしがみついていたかと思うと、今度は抱き着いてスリスリスリスリしてきた。確か、父さんと母さんがやってたな。好きってことなのか? モテてるのか? う~ん……、悪い気はしないが、さすがに私だって5歳の幼女に恋愛感情は抱けないぞ。参ったな、こりゃ。
そんなことを考えていると、その子はこう言った。
「ウチの畑を耕してくれて、ありがとう」
なるほど、感謝の気持ちを表すときにもこうするのか。
私はその子の頭をなでなでしてあげた。とても嬉しそうだった。
しかし、こんなに抱きつかれてジッとしててもらちが明かない。私はその子をおんぶして、田吾作さんの家の畑へと向かった。女の子は背中でもスリスリしていた。
そんな女の子が、私の背中でおもむろにこう言った。
「あのね、私、モコって言うの」
「・・・・・モコ?」
いきなり、名前を教えてくれた。・・・・・ああ、なるほど。私が一度も名前を呼ばなかったから、私が名前を知らないと思ったのか。はい、正解です。
いや、知らないというか、忘れていたというか。そうだそうだ、「モコ」って言う名前がいまいちピンと来なくって頭に入らなかったんだよな。うんうん、そうだった、そうだった。
そんなことを考えていたら、名前を憶えていなかったのが恥ずかしくなってしまった。それで、私はこう言った。
「モコ、か。『モコモコ』でいいかい? そっちの方が呼びやすそうだ」
「モコモコ? うん、それじゃあモコモコでいいよ」
モコモコは納得してくれたようだ。
「それじゃあ、これからよろしくな、モコモコ」
「うん、よろしく、ムスイ」
そう言って、モコモコはずっと私にスリスリし続けた。