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異世界転生神話 モコモコ道 ~いずれ魔王になる神は、最愛の女性を幸せにできない~ 作者:ムスイ
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第14話(一)魔狼との戦闘

地平線がうっすらと明るくなり始めた早朝、モコじいさんは家畜小屋に向かっていた。ヤギの乳と、鶏の卵が目的だ。

「今日もいい天気になりそうじゃな~」

そんなことを言いつつ、家畜小屋に向かって歩いていたところ……、家畜小屋の様子がおかしい。扉が開いている。ヤギや鶏が小屋の外に出ている。白いヤギの体には赤い血がついているものも。

モコじいさんはあわててヤギの方へと近づいた。

「これはいかん。魔物が出たんじゃ!」

小屋の中をのぞく。すると……、鶏の羽が散乱していた。そして、赤い血が大量に飛び散っている場所が一ヶ所……。

モコじいさんは家畜たちの数を数える。ヤギが12頭。鶏が20羽いる。被害はヤギ1頭、鶏2羽のようだ。

「大変なことになってしもうたな……」

モコじいさんは急いで、村長の家へと向かった。

(ドンドンドンドン!)

モコじいさんは村長の家の扉を必死に叩く。

「村長! 起きてくだされ! 村長!」

しばらくすると、村長と松さんが出てきた。

「おはようございます」
「ふぁ~……、どうしたんじゃ、こんな朝早く」

松さんはモコじいさんの不穏な空気を感じ取り、少し心配そうな顔をしている。
村長は寝ていたようで、少し眠そうだ。

「大変なんじゃ、村長。家畜小屋が魔物に襲われた」
「な、なんじゃと!?」
「ヤギが1頭やられた。鶏も2羽やられたようじゃ」
「なんということじゃ……。わかった、村の男衆を集めよう」

こうして、村長の家に村中の男衆が集まることになった。


 *** *** ***


村の男衆は村長の家に集まった。村長、田吾作、栄治郎、モコじいさん、ムスイの父、そして12歳のムスイもそこにつれてこられていた。

なお、コッソリと建物の外から「モコモコ」が中の様子をうかがっている……。

「困ったことになったの~……」

村長は腕を組み、悩んでいる様子。

「魔狼は人を襲う恐ろしい魔物じゃ」
「ほおっておくわけにはいかんな~」
「困ったの~、困ったの~」

田吾作さん、栄治郎さん、モコじいさんも困り顔だ。

しかし……、私にはなんだか演技がかっているように見えるのだが。私としては「田吾作さんなら余裕で勝てるんじゃないの?」と言いたいところなのだが……。隣にいる父さんも同じように思っているのか、少し戸惑っている。

「足跡を見たが、魔狼一匹の仕業じゃ。集団で無かったのがせめてもの救いじゃな」
「ワシらの豊かな生活はもう終わりじゃな~……」

私は「豊かだったかな?」と普通に思った。

なんだかハッキリしない会話をする4人。話しが進まないので、私が口をはさんだ。

「あの、ちょっといいですか?」
「うむ! 言ってくれ、ムスイ君」

待ってましたと言わんばかりの村長の反応だった。

「魔狼ってどんな奴なんですか? 私は見たことないのですが」
「そうかそうか、ムスイ君は魔狼をみたことがなかったか。そうじゃな、こんな魔物じゃ」

大五郎さんが絵を描いてくれた。メチャクチャ上手い絵だった。

「なるほど・・・・・、オオカミですね」
「オオカミ?? 魔狼じゃ」
「ま、まぁ、呼び方は何でもいいです。この魔狼ってそんなに強いんですかね? 剣や弓でどうにかなりませんか?」

それを聞いて、村長は首を振る。

「無理じゃな。巨体なわりに、動きが俊敏でとらえられない。ワシらにはどうすることもできんのじゃ。」
「巨体? どれくらいのサイズなんですか?」
「ふむ、人がこれくらのサイズじゃ」

大五郎さんが魔狼の絵の横に人を書いた。・・・・・魔狼、でかいな。2.5mくらいあるんじゃないか? 異世界のオオカミは凄すぎる。私もこんなの相手にしたくはない。

「それにしても大五郎さん、絵が上手いんですね~」
「フッフッフ、わかるかね、ムスイ君。ワシの絵はなかなかのものじゃろう。ワシは若いころから絵が上手くての~。当時やっていた牛乳を運ぶ仕事の合間に毎日毎日絵を描いていたものじゃよ。そしてな、著名な人物から『ルーベンスを継げる才能』と褒めたたえられていたんじゃよ」(早口)

(ルーベンスって誰だろう?)

「そこでじゃ、私は富と権力を手に入れるためにコンクールに絵を出したんじゃ。余裕で優勝するつもりじゃった。一生遊んで暮らすことは確定だったんじゃ。しかし、ワシは落選した。ワシはこのコンクールに人生全てをかけていたというのにじゃ。ワシの栄光を全て奪って行った男、そいつの名はステファン・キースリンガーという。ワシはコヤツの名を死ぬまで忘れることは無いじゃろう。ワシは泣いた。泣いて泣いて泣き疲れてな、当時の飼い犬パトラッシュに疲れをうったえようかと思ったがグッとこらえて・・・・・」(早口)

長い、長すぎる・・・・・。
私は大五郎さんをスルーして、田吾作さんに質問した。

「あの、田吾作さん。田吾作さんの強さがあれば魔狼くらいどうにかなるんじゃないんですか?」
「ふむ、そう思うかね?」
「はい」
「しかし残念じゃが、ワシは戦えん。実はワシは腰痛持ちでの~、現在ギックリ腰になっておるんじゃよ」
「ええ! ギックリ腰!? 田吾作さんって腰痛持ちだったんですか? 初耳ですが?」
「うむ、ムスイ君に心配かけまいと黙っておったからの~」
「でも、かなり余裕があるように見えるのですが・・・・・」
「ワシくらいになると、ギックリ腰でも何事もないように見せることができるんじゃよ」
「な、なるほど・・・・・」

まったくそうは見えないけれど、田吾作さんはギックリ腰だった。
田吾作さんを頼れないなら仕方がない。

「それなら、村長。街には冒険者ギルドがありますよね? そこへ行って魔物退治を依頼すればいいんじゃないですか?」

それを聞いて、村長と田吾作さんは顔を見合し「わかっとらんな~」と言わんばかりに、首を横に振った。

「まぁ、そうするのが普通じゃな」
「しかしな、いかんせん、村には金がないのじゃよ、ムスイくん」

じいさん3人は、深い溜息をつく。
大五郎さんはまだ何かペチャクチャ熱く語っている。

「お金ですか。幾らくらいかかるんですか?」
「魔狼1匹なら、金貨5枚といったところじゃろう」


日本円で20万円と言ったところか。高いと言えば高いが、頻繁に現れるわけでもないだろうし、そんなものでは? 何か問題でもあるのだろうか?

「それくらいなら皆で少しずつ出し合えば払えますよね?」

とりあえず、言ってみた。しかし、2人の表情は暗い。
大五郎さんは握りこぶしを作って熱く語っている。

「ムスイ君は子供じゃから世の中の厳しさというものをわかっとらん」
「まったくじゃ」
「よ、世の中の厳しさ??」

なんか、のどかなこの村には似つかわしくない言葉が出てきた。

「この村は長年借金をしながらギリギリ食いつないできたんじゃよ。稼いだお金はほとんど借金返済にあてている。そのため、村皆のお金をかき集めたとしても金貨1枚には程遠いのじゃ」
「こ、この村はそんなに貧乏だったんですか?」
「全てを知れば、ムスイ君がドン引きするくらいには貧乏なんじゃよ」

と、とんでもないな・・・・・。

いや、でも父さんは街で武器を売っていて稼ぎがいい。金貨20枚くらい持っているはずだ。

「父さんなら・・・・・」
「稼いだお金はすぐに使い切っているんで、家には銅貨1枚さえないぞ」

即答された。
貯金しろよ、ク●ッタレ! 私は頭を抱える。

「そ、それじゃ~、今まで魔物が出現したらどうしてたんですか?」
「みんな家にこもって、魔物様がいなくなるのを待つんじゃ」
「畑の作物は諦めるしかない。ワシらはそうやって生きのびてきた」

大五郎さんが戻ってきていた。
なんという消極的な対応だろうか。

「魔物がこの村に出現したのは20年ぶりなんですよね? このあたり、魔物は少ないんですか?」
「いや、かなりおるはずじゃ」
「ではどうして20年も村に出現しなかったのですか?」
「この村、ボロボロだったからのう」
「魔物も餌場としては見ていなかったのかもしれんな~」

魔物さえスルーするほど落ちぶれていたのかよ。

「しかしな、10年ほど前からムスイ君が一生懸命頑張ってくるようになった。おかげで食べるものが増え、ワシらの生活も豊かになった。その結果、魔物様にとっても魅力的な狩場になってしまった、というわけじゃな」
「そうじゃな。こんなに豊かになってしもうてはな~」
「うむうむ、魔物もほおっておかんじゃろうて」

チラッ、チラッとみんなが私を見ている。なんか私が悪いかのような話の流れにされてしまっているかのような・・・・・。

「ああ、ワシがギックリ腰でなければな~」
「他に誰か頼りになる者はおらんかの~」
「そうじゃの~、日ごろから剣や弓の修行をしている立派な男がいればいいんじゃがの~」

そして、みんなして私の方をチラッ、チラッと見てくる。グググ・・・・・なんて人達だ。結局、私にやらせたいのだろう。私は引き受けるしかなかった。

「わ、わかりました。わかりましたよ。私が魔狼を退治すればいいんでしょ?」
「おお! やってくれるか、ムスイ君!」
「ムスイ君なら必ずやってくれると信じておったぞ!」
「ワシの弟子じゃ。ムスイ君ならきっとやれるぞ」

最初から私頼みだったのかよ。
困った人たちだ。

「待ってください、ムスイはまだ12歳なんですよ!」

父さんが反対してくれた。

「父さんと2人なら楽に倒せると思うんだけど」
「いや、父さんは戦闘経験が無いから無理だ」

ノータイムで拒否された。
というか、12歳の息子に魔物との戦闘経験があるとでも思っているのだろうか? もう、色々と突っ込むのもバカバカしく感じる。

こうして、私一人で魔狼と戦うことになってしまった。
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