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第10話(一)畑仕事とモコモコと
村の人たちの為に頑張っている父さんを見習って、私は村の人たちのために畑を耕すことにした。
この村は若い人がいないせいか、畑の状態が良いとは言えない。
あまり野菜を育てていないし、草も結構生えている。
水やりもしっかりとできているようには見えない。
自分たちで食べる分だけできればいいと判断しているってことだろうか?
なんにしても、たくさん野菜を育ててダメなことはないだろう。
「よし、とりあえずできる範囲でやってみるか~」
まずは自宅の畑の草を取って、耕した。
野菜の種を植えて、水をやった。
ま~、こんなものだろう。
どれくらいで芽が出るんだろうか?
そして次に、別の家の畑を耕した。
そうこうしていると、一人の女の子が私の元にやってきた。
その子はテクテクとぎこちなく歩いてすぐ近くにやってきて、木の下に座った。
そして、ジ~ッと私を見ている。
確か、この家に私と同い年の3歳の女の子がいたな。
時々見かけてはいたが、特に話しをしたことはなかった。
まだ小さい幼女だからな~。
名前は………何だったかな?
えぇっと………忘れた。
ま~いいや。
私は女の子のことは気にせず畑に集中することにした。
すると、女の子の方から私に話しかけてきた。
「ね~、ムスイ。何をやってるの?」
思いがけず話しかけられ、私は焦った。
あの子は私の名前を知っていたのだ。
私は忘れてしまったというのに。
なんだか申し訳ない。
「え、ええっとね………、畑仕事だよ」
「そこはウチの畑だよ?」
「ん? ま~そうなんだけどね。
荒れていたし、野菜を植えるスペースもあったから
とりあえず、畑を耕して野菜でも育てようかな~と思ったんだよ」
「ふ~ん………」
よくわからない返事だ。
そして、ジ~ッと私を見ている。
「野菜ができたらどうするの?」
質問は続いた。
「そりゃま~、ここはキミんちの畑だからね。
お家の人が収穫して食べればいいんじゃないかな~」
少女は首をかしげる。
「どうして? ムスイが植えたんだよ?」
「ま~そりゃそうだけど、こういうのは土地の持ち主のものになるものだからね~」
それを聞いて納得できないという顔をする。
「ムスイが野菜を植えているのに?
ムスイのじゃないの?」
こだわるな~………。
一体何をそんなにこだわっているのかよくわからん。
私は少し考え、この娘が納得しそうな言い方を考えた。
「ええっとね、なんと言えばいいかな~………。
その~、この世界には神様が決めたルールってものがあるんだよ」
「………神様が決めた、ルール?」
「そう。そのルールでは、野菜は土地の人のものになることになっているんだよ。
だから、この野菜を植えた私のものじゃなくて、
この土地の持ち主であるキミの家のものになるんだよ」
その子は私をジッと見つめている。
なんか息苦しい。
「………それじゃあ、どうしてムスイはウチの畑を耕しているの?
私の家のものになるのに、どうしてムスイが畑を耕しているの?」
もっともな質問だ。
「う~ん………、それはね、私がみんなの役に立ちたいと思ったからだよ。
こうやって畑を耕せば、たくさん野菜が取れる。
野菜が取れれば、君の家の食卓もにぎわう。
みんなが笑顔になる。
だから、こうやって村のみんなの畑を耕しているんだよ」
「………」
返事がない。
その女の子は私をジ~ッと見つめたまま黙り込んでしまった。
納得してくれたのだろうか?
結局、私がここの畑仕事を終えるまで、その子はずっと私を見ていた。
「よし、これでここは終わりだ」
私は一息ついた。
そして………チラリと女の子の方を見る。
女の子はずっと私の方を見ている。
畑仕事に興味があるのだろうか?
なんとなく見ているだけなのだろうか?
何がしたいのだろうか?
う~ん………よくわからん。
とりあえず、今度は私の方から話しかけることにした。
「え、ええっと………、
今度は栄次郎さんとこの畑を耕そうと思うんだけど………、
君も来るかい?」
少女はビックリしたような顔になり、その場から立ち上がった。
そして、力強く返事をした。
「う、うん!」
そして、その女の子はトテトテと不器用な歩き方で私の方に歩いてきて、
ガシッと私にしがみついてきた。
………なんでしがみついてきたのだろうか?
その女の子はしばらくしがみついていたかと思うと、
今度はスリスリスリスリしてきた。
う~ん………父さんと母さんがいつもやっている奴だな。
好きってことなのか?
モテてるのか?
う~ん……、悪い気はしないが、
さすがに私だって3歳の幼女になつかれてもね~。
そんなことを考えていると、その子はスリスリしながらこう言った。
「ウチの畑を耕してくれて、ありがとう!」
なるほど、感謝の気持ちを表すときにもこうするのか。
異世界の風習というものだな。
私はその子の頭をなでなでしてあげた。
とても嬉しそうだった。
私は抱き着いているその子をおんぶして、田吾作さんの家の畑へと向かった。
女の子は背中でもスリスリしていた。
栄次郎さんの畑について、女の子をおろす。
すると、女の子は私に向かってこう言った。
「あのね、私、モコって言うの」
「………モ、モコ?」
思いがけず、名前を教えてもらった。
ああ、なるほど。
私が一度も名前を呼ばないから、私が名前を知らないと思ったというわけだな。
はい、正解です。
いや、知らないというか、忘れていたというか。
そうだった、そうだった。
「モコ」って言う名前がいまいちピンと来なくって頭に入らなかったんだよな。
私は言い訳がましく、そんなことを考えてしまった。
しかし、3歳の女の子は私の名前を知っていた。
にもかかわらず、私が覚えていなかったというのはバツが悪い。
そんな私は、頭をかきかきしながら、言い訳がましく、こう言った。
「モコ、か~………。そうかそうか。
それじゃあ、これから『モコモコ』って呼んでいいかい?
そっちの方が呼びやすそうだ」
「モコモコ?」
思いがけないことを言われ、女の子は戸惑う。
しかし、少し頭をひねって考えた後、うんうんと納得したようだ。
「うん、それじゃあモコモコでいいよ」
女の子はそう言った。
「それじゃあ、これからよろしくな、モコモコ」
「うん、よろしく。ムスイ」